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The Todai-Yale Initiative

The Todai-Yale Initiative

イェール大学における研究計画

イェール大学では、これまでの私自身の日本の都市計画史やまちづくりに関する研究における問題意識、問題関心の継承、発展を強く意識しながら、1)シヴィックアートの歴史的展開とその再評価に関する研究と、2)地域再生のためのアーバンデザインの実践に関する研究の両者に取り組みたいと考えている。具体的な研究テーマは以下のとおりである。

1)シヴィックアートの歴史的展開とその再評価に関する研究

 第一に、シヴィックアートの制度展開として、1890年代から1920年代のアメリカ近代都市計画成立期に、全米の諸都市で設立された芸術委員会(art commission)の設立背景や活動実態を明らかにしたい。芸術委員会は、公共空間に設置される芸術作品や公共建築自体の位置やデザインを審査する行政組織であり、1898年にニューヨーク市で設立されたのを皮切りに、全米諸都市で設立された。また、1913年には第一回全米芸術委員会会議が開催され、芸術委員会の機能充実と全米諸都市での設立普及を目指した「芸術委員会運動」が提起された。アメリカ国内におけるこの運動の成果は決して十分満足のいくものではなかったと考えられるが、国内だけではなく、イギリスの王立芸術委員会の設立や都市協会の活動、そして日本の都市美運動にも大きな影響を与えたことは特筆されるべきである。そうした国際的な文脈からも、アメリカ国内における芸術委員会運動の全貌を把握することが望まれている。イェール大学が立地するニューヘイヴンでも1913年に芸術委員会が設立された。その設立の立役者であり、ニューヘイブンの都市美運動を主導したジョージ・D・シーマー(George D. Seymour)がイェール大学に寄贈した資料の調査を作業の中心として、ニューヘイヴンの他にも、ボストンやボルティモア等の東海岸諸都市における資料調査を実施する予定である。

 第二に、現代アメリカの都市デザインの大きな潮流である「ニューアーバニズム」運動を背景として、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカを中心として生み出した都市デザイン思想、技法であるシヴィックアートに関する歴史研究やその現代的再生の議論が盛んになっているが、そうした現代の都市デザインとシヴィックアートに関する歴史研究との関係の実態をより深く解明したい。特にこうした動きが単に学界やデザイン界に留まらずに、社会的な運動として成立している様子を捉えたい。具体的には、市長と都市デザイナーを結びつける都市デザイン市長協会(The Mayors' Institute on City Design)の活動に注目している。

 

2)地域再生のためのアーバンデザインの実践に関する研究

 第一に、大学がコミュニティの再生に果たしうる役割に関して調査を行う。アメリカでは、大学をベースとしたアーバンデザインセンターが全国各地で設置されてきた伝統がある。そのセンターの特徴は実践を通したサービスラーニングの機会にあると言われている。近年、我が国においても同様の取り組みが盛んに実施されているが、資金面の充実、学生の役割の明確化、他分野・多分野の専門家との関係構築、地域との継続的関係構築などの面で様々な課題がある。イェール大学でもイェール・アーバンデザイン・ワークショップ(YUDW:Yale Urban Design Workshop)が1992年に設立され、コミュニティをキーワードにした地域の再生、活性化に取り組んでいる。そうした組織の活動の変遷や実態を中心に調査を進める予定である。

 第二に、都市の諸機能の郊外化の影響で、1980年代までに一度は大きく落ち込んだアメリカのダウンタウンの、近年の再生の試みについて調査を行う。現代の日本においても、中心市街地の再生がアーバンデザインの重要な課題であることに間違いはない。アメリカでは、例えばメインストリートプログラムによる地方中小都市の取り組みの中に成功事例が見受けられる一方で、例えばイェール大学が立地するニューヘイヴンのように、1950年代から1960年代にかけてのアーバンリニューアルによるダウンタウンの大規模な改変が、傷跡として今もダウンタウンの環境に影響を与え続けている都市が大半である。成功事例から学ぶのと同時に、必ずしも未だ成功していない都市のダウンタウンでの取り組みの現況についてもこの眼で確認したい。

 以上の研究を、アーバンデザインの歴史と理論に造詣が深く、YUDWを主宰する実践家でもある建築学科のA.プラッタス教授のアドバイスを受けながら、進めていきたい。